盛岡市はガス料金が高い?住む前に知っておきたい岩手県のガス事情について

2024.05.28

広大な土地に豊かな自然を残し、世界遺産や文化・産業、美味しい食べ物に恵まれた魅力あふれる岩手県。毎年開催される「盛岡さんさ踊り」や「花巻まつり」は、県外からも多くの人が訪れる大人気の伝統行事です。

そんな魅力の多い岩手県ですが、実はガス料金が全国平均より高いことをご存知ですか?ガスは、お風呂を沸かしたり、料理をしたり、私たちの生活にはなくてはならないものです。そのため、これから岩手県で暮らす人は、岩手県のガス事情について知っておくと今後の生活で役立つでしょう。

また、これから注文住宅を検討している人の中には、「プロパンガスと都市ガスって何が違うの?」「好きな方を選べるの?」など、気になっている人もいるかもしれません。そこで今回は、都市ガスとプロパンガスの違いや、それぞれのメリット・デメリット、さらに岩手県のガス事情について解説します。

都市ガスとプロパンガスの違い

住宅で使用されるガスは、主に「都市ガス」と「プロパンガス」の2種類です。この2つは、供給方法、原料・成分、重さ、熱量、災害時の復旧時間などにおいて、さまざまな違いがあります。都市ガスとプロパンガスの違いは、下表をご確認ください。

参考元:一般社団法人 日本ガス協会 都市ガスとLPガスの違い

それでは項目ごとに、都市ガスとプロパンガスの違いについて解説していきます。

原料・成分・重さ

 都市ガスは、メタン(燃える気体)を主な成分とする天然ガスです。空気よりも軽いため、万が一ガスが漏れた場合は、室内の上部にたまります。そのため、都市ガスを利用する家では、高い位置にガス探知機を取り付けると効果的です。

 一方プロパンガスは、プロパン・ブタンを主成分とする液化石油ガスです。空気よりも重い性質であるため、ガスが室内に漏れた場合は足元にたまります。ガス検知器をつける際は、低い位置につけると良いでしょう。

 ちなみに、どちらのガスも無色・無臭ですが、ガス漏れ時にすぐに気がつけるように匂い付けしてあります。

供給方法・エリア

 都市ガスは、道路下のガス管を通じて供給されます。したがって、ガス管が設置されていない地域では都市ガスを利用することはできません。

 都市ガスは、都心部や人口が密集したエリアに多く、限られた地域のみ使用可能です。一方プロパンガスは、各家庭にガスボンベを配置して供給しているため、設備を整えれば全国どこでも利用することができます。

災害時の復旧

 プロパンガスはガスボンベを各家庭に設置する「分散型供給」を行っています。そのため、自然災害時に点検・補修しやすく復旧が早いという特徴があります。

 一方、都市ガスは「系統供給」と呼ばれ、供給所からガス管を通して各家庭にガスが供給されています。万が一、地震や災害によってガス管が損傷すれば、各家庭への供給はストップしてしまいます。また、ガス管の修復や安全確認にはとても時間がかかるため、復旧までには時間がかかる可能性が高いでしょう。

岩手県の都市ガスとプロパンガスの料金を比較!

2017年都市ガスの自由化が始まって以降、「ガス代を節約したい」と考える人が急増しています。また、「都市ガスは安い!」という話を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。結論からお伝えすると、プロパンガスに比べて都市ガスの方がガス料金は安くなります。では、実際にどれくらい料金が違うのでしょうか。

下表では、盛岡ガスの料金を参考に岩手県の都市ガスとプロパンガスの料金を比較しました。ただし、プロパンガスの方が都市ガスよりも熱量が高くなることから、都市ガス比を2.23倍としプロパン換算して計算しています。

参考元:盛岡ガス株式会社

上表はあくまで参考例ですが、都市ガスとプロパンガスを比較すると約3,430円の差があることがわかりました。それでは次に、都市ガスとプロパンガスの料金システムについて見ていきます。

都市ガスの料金システム

都市ガスはこれまで規制料金(公共料金)でした。そのため、ガス料金の設定には国の許可が必要であり、ガス会社が自由に料金設定をすることはできませんでした。しかし2017年4月、都市ガスの規制料金が廃止され、都市ガスは「自由料金制」になりました。

そこから消費者はガス会社を自由に選択できるようになり、ガス会社はガス料金を自由に設定できるようになったのです。しかし、これまでの規制料金の影響は色濃く残っており、コストを大幅に下げることはなかなか難しいという現状があります。

なお、都市ガス料金の算出方法は次の計算式で求められます。

  •  1ヶ月の基本料金(税込み)+1ヶ月の調整単位料金(税込)×1ヶ月のガス使容量

下表は、盛岡ガスの基本料金ですので参考にご確認ください。

参考元:盛岡ガス 一般ガス料金

プロパンガスの料金システム

実は、プロパンガスは昔から「自由料金制」です。そのため、都市ガスのように国に許可をもらう必要なく、それぞれのガス会社が利益や人件費などを考えて自由に料金設定できます。当然、同じ岩手県内でもガス会社が違えば毎月のガス料金は異なります。

ガス料金を抑えたい人は、定期的にガス料金の見直しを行ったり、ガス会社を比較したりしながら、契約するガス会社をしっかりと選ぶことが重要です。

なぜ都市ガスの方が安いの?

都市ガスとプロパンガスの料金には違いがあるものの、品質に大きな差はありません。

ではなぜ、都市ガスは料金が安いのでしょうか。これは簡単に言うと、「供給方法」と「コスト」による違いです。都市ガスは、ガス管を通して各家庭にガスが供給されます。これらの作業はコンピューターによって制御されているため、人手がかからず、人件費を大きく削減できます。また、ガス管交換も数十年に一度行う程度ですので、比較的ランニングコストも抑えることができます。

一方プロパンガスは、家庭ごとにガスボンベを設置する「分散型供給」です。そのため、ガス会社の人が定期的にガスボンベの入れ替えを行ったり、メンテナンスを行ったりするため、当然人件費がかかります。

このように、都市ガスとプロパンガスを比較すると供給にかかるコストや手間が大きく異なるため、料金差が生じると考えられます。

岩手県のガス事情

冒頭でもお伝えしましたが、岩手県は全国平均よりガス料金が高い傾向にあります。これは都心部に比べて都市ガスの普及率が低いことや、不透明なプロパンガスの料金設定が固定化していることが原因だと考えられます。

そこでこの章では、岩手県の都市ガス普及率や供給エリアなど、岩手県のガス事情についてお伝えします。

都市ガス・プロパンガスの利用割合

参考元:経済産業省 第4回液化石油ガス流通ワーキンググループ 事務局提出資料 料金透明化・取引適正化の動向

岩手県のガス事情を知る前に、まずは全国の都市ガス・プロパンガスの利用率について見ていきましょう。

上図は、令和元年の年度末における都市ガス・プロパンガス・オール電化を利用する需要家世帯の比率をグラフ化したものです。これを見ると、都市ガス約46%、プロパンガス約38%、オール電化16%となっており、約半数の世帯が都市ガスを利用していることがわかります。

また、政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指し、環境負担の少ないとされる都市ガスに注目しています。そのため、今後ますます都市ガスの供給が増えることが予想されており、地方ガス事業者は積極的な取り組みが課題となります。

岩手県の都市ガス普及率

参考元:経済産業省 電力及びガスの小売全面自由化について

では、実際に岩手県ではどれくらい都市ガスが普及しているのでしょうか。経済産業省の調査によると、岩手県の都市ガス普及率は10%前後でした。最も都市ガスが普及しているのは東京都で88.7%、次いで大阪の83.5%となっています。

一方、普及率が最も低いのは島根県の8.7%です。上表を見ると、都心部は普及率が高く、地方は普及率が低いことがわかります。また、都市ガス普及率の全国平均は46.3%であることから、岩手県の都市ガス普及率は平均より低いことがわかります。ただし、このデータは約10年前の調査であるため、現況とは多少異なる部分があります。

岩手県の都市ガス供給エリア

次に、岩手県の都市ガス供給エリアについて確認していきましょう。

 

岩手県では現在5社のガス事業者が都市ガスを供給しており、供給世帯数が最も多いのは盛岡ガスです。盛岡ガスでは供給区域図を確認することができますので、気になる方は下記サイトをご活用ください。
盛岡ガス供給区域図(参考)

 

まとめ

岩手県はガス料金が高いとお伝えしてきましたが、その理由のひとつに岩手県の冬の寒さも影響しています。特に12月から3月は一年で最も寒さが厳しいため、ガス料金も高くなると考えられます。また、高齢になると身の回りのお金の管理ができなくなるケースがあります。そのため、ご両親の家のガス料金についても確認しておくと安心です。

都市ガスは、料金が安く、環境に優しいというメリットがある一方で、災害時の復旧が遅いというデメリットがあります。プロパンガスは災害時の復旧が早い一方で、料金が高い、基本料金が不明瞭であるなどのデメリットがあります。

このように、都市ガスとプロパンガス、どちらにもメリット・デメリットがあるため、それぞれの特徴を理解したうえで利用を検討しましょう。

 

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