岩手県の家づくりにおける、耐震・断熱性能について
2024.08.29
2024.08.29

自然の豊かさや歴史、文化を感じる岩手県。魅力の多い県ではありますが、夏は高温多湿、冬は北海道並みの厳しい寒さと気候条件が厳しいという一面も。そんな岩手県で、一年を通して健康で快適に生活するためには、住宅性能が備わった住まいが必要不可欠です。
近年、住宅業界では住宅性能や省エネ化に注力しています。家づくりを計画している人の中には、「耐震性能」や「高気密・高断熱」などの言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。これらは、住宅性能には欠かせないキーワードですが、「難しくてよくわからない」という人も少なくありません。確かに難しい専門用語も多いですが、しっかり理解して家づくりに活かすことが「家づくり成功の秘訣」とも言えます。
そこでこの記事では、家を建てるなら知っておきたい住宅性能の種類について詳しく解説していきます。

災害大国である日本で、家族を守り、安心安全な生活を送るためには、「耐震性能」や「耐火性能」など住宅性能が欠かせません。2011年3月11日に発生した東日本大震災は岩手県でも深刻な被害をもたらし、10年以上経過した今でも記憶に新しいでしょう。
このような過去の災害を教訓とし、近年の住宅にはさまざまな住宅性能が備わっています。この章では、住宅性能の「耐震性能」「断熱性能・気密性能」「耐火性能」について、項目ごとに詳しく解説します。
耐震性能とは、「地震に対して建物がどれくらい耐えられるか」という安全性の度合いを示したものです。耐震性能を数値化したものを「耐震等級」といい、建築基準法によって定められています。
この耐震性能は、等級1から等級3までの3段階に分かれており、数値が高いほど耐震性が高いということになります。それでは、耐震等級の内容を見ていきましょう。

耐震等級1は、建築基準法が定める最低限の耐震性能をクリアしていることを示しています。ただし万が一、震度6強程度の地震が起きた場合は、災害後に住み続けるのは困難で、建て替えや住み替えが必要になるケースが多いです。
耐震等級2は1.25倍、耐震等級3は1.5倍程強度が強くなると定義されており、安全性を高めるために構造、柱、梁、壁、窓や開口部等の制限があります。一戸建てで耐震等級2や耐震等級3を実現するためには、間取りや設計に制限が出る可能性が高く、また、建築費が高くなると考えられます。
しかし、耐震等級3の建物は、東日本大震災でもほとんど倒壊しなかったというデータもあるため、地震に負けない家づくりを目指すなら、耐震等級を意識した家づくりが必須となるでしょう。
耐震性能2、3の取得には、着工前に指定住宅性能評価機関への申請が必要なので注意してください。
暑さや寒さは万病の元と言われますが、快適で健康に生活するためには「断熱性能」「気密性能」が重要です。また、家づくりをしていると目にする機会が多い「UA値」「C値」。UA値は断熱性能、C値は気密性能に関係しており、理解しておくことで家の断熱性能や気密性能を判断できるようになります。ぜひ、この機会に覚えておきましょう。まずは、「断熱性能」と「気密性能」それぞれの内容についてお伝えします。
・断熱性能
断熱性能は、外部から熱が伝わらないようにする役割を持ちます。外皮に接する床、壁、天井に断熱材を入れたり、遮熱性の高い窓ガラスを使用することで断熱性を高めることができます。また、断熱性能は「UA値」(外皮平均熱貫流率)という数値で表記され、UA値が低いほど熱が逃げにくく、断熱性能が高いことを示しています。なお、日本は外気温の地域差が大きいため、全国を8つの地域に分けてUA値の基準を定めています。

これを見ると、岩手県は2〜4地域に区分されていることがわかります。しかし、葛巻町は2地域、盛岡市は3地域、宮古市は4地域など、同じ岩手県内でも地域区分は異なります。地域区分に応じて求められる性能が異なるため、建築予定地が決まっている方は、地域区分について調べてみると良いでしょう。
・気密性能
気密性能は、空気の流れを室内に留めることで室温を一定に保つ役割を持ちます。気密性能を高めるためには、外気の影響を受けないよう住宅内の隙間をできる限り減らすことが重要です。気密性は「C値」(相当隙間面積)という値で表記され、住宅全体にどれくらいの隙間があるかを表す数値です。C値が小さいほど隙間が少なく、気密性に優れた住宅であることを示しています。
よく高気密高断熱の家を「魔法瓶(水筒)のような住宅」と表現することがあります。魔法瓶は、蓋をしっかり閉めておけば、温かいものは温かいまま、冷たいものは冷たいままキープすることができます。これを住宅に置き換えて考えると、断熱性能・気密性能に優れた高気密高断熱の家は「夏は涼しく、冬は暖かい」環境が保てるようになります。冬場のヒートショックを防いだり、夏場の熱中症を予防したりする効果が期待できるため、家族みんなが健康的な生活を送ることができるでしょう。
C値は現場で実測することでしか測定できないため、気になる方は住宅会社に測定を希望しましょう。
耐火性能とは、建築基準法において通常の火災が終了するまでの間、火災による建物の倒壊や延焼を防止するために耐力壁、外壁、柱、床、梁などに求められる性能のことです。火災発生時に、住宅が倒壊するまでの時間を長く確保できれば、万が一家族が取り残された場合でも避難する時間を確保できます。また、周囲への燃え広がりや火事による損失を最小限抑える効果が期待できます。
耐火性能として求められている技術基準は以下の通りです。
1.延焼を防止すること(他から火をもらわない、広げない)
2.火災による耐力低下を防止し倒壊しないこと
3.避難経路を確保すること
4.火災後には修繕により再使用できること
耐火性能の高い家づくりを行うためには、構造や、主要部分となる壁・梁・床・柱・屋根・階段などに、国土交通大臣の認定を受けた材料を使用しなければなりません。また、用途地域で「防火地域」や「準防火地域」に指定されている場合は、地域ごとの制限があるため注意が必要です。
また建築基準法以外に、勤労者財産形成促進法施行令で定めた省令準耐火構造という基準があります。この基準を満たすことで火災保険料が割引される場合があるので、気になる方は調べてみて下さい。

家づくりでは考えることが多岐にわたります。今回紹介した住宅性能だけを見ても、耐震性能・断熱性能・耐火性能など、住宅性能の種類の多さに「何を選べば良いのかわからない」と戸惑ってしまう方も多いでしょう。
家づくりで大切なのは、ご自身やご家族が暮らしの中で何を優先するかということです。デザイン性にこだわりたい人もいれば、住宅性能にこだわりたい人もいます。言い方を変えれば「お金をかけて何を手に入れるか」ということです。まずは、家族でしっかり話し合いを行い、優先順位をつけて考えてみましょう。
また、大きなお子さんがいるご家庭では、お子さんの意見も聞いてみてください。それぞれの思いが詰まったマイホームは、より愛着が増し、家族で話し合った時間はかけがえのない思い出になるでしょう。

今回は、家づくりで抑えておくべき住宅性能についてお伝えしました。近年住宅業界では住宅性能や省エネ住宅に力を入れているため、魅力的な住宅性能も数多くあります。ただし、住宅性能にはメリットばかりではありません。住宅性能を検討する際は、デメリットをしっかり把握し、理解したうえで慎重に検討しましょう。
また、希望を全て叶えようとすると予算オーバーになってしまうことも。家づくりでは、足し算ばかりではなく、時には引き算も必要です。あらかじめ、家族でしっかり話し合いを行い、譲れない部分、妥協できる部分を明確にしておくことで家づくりをスムーズに進めることができるでしょう。